「rule of the site そこにしかない形式」千葉学


rule of the site―そこにしかない形式

rule of the site―そこにしかない形式


正直一生手に取ることはないと思っていた本である。
彼の建築はどこか冷たく、人間の生活感が感じられないためか、
あまり魅力を感じていなかったからである。
しかし、とある事情により読む事になった。
それでとにかく食わず嫌いはいけないと思い、読んでみた。


案の定というか、残念ながらというか、
全体における何かしら一貫したテーマを感じ取る事は出来なかった。
おそらく彼自身もまだ模索中なのであると思う。


ただ一つ、文中に現れた「僕たち」という呼び方には好感が持てた。
「僕」ではなく、この「僕たち」という言葉は
建築家としての独占的になりがちな建築に対する意識を
外に開いていると思えたからだ。
建築に対して一対一で対応するのでなく、
より普遍的な解を与えるために
出来るだけ多くの可能性を探ろうとしているように思えた。
それはとても好ましく感じた。
無個性に感じられた彼の作品群が
この姿勢に起因するものであるなら、
このこと自体が建築家としての彼を
キャラクタライズしていくものになるかもしれない。


キーワードとしてはいくつか残るものがあったので
メモとして残しておこうと思う。


閾値(Threshold)の設定。
・厚みのある窓のステンレス鏡面に映る外部
・交差点は、街を空間として理解する上で、最も情報量の多い場所。
・その場所に建てることによって周辺の環境の特質だったり魅力だったりが、
 一気に浮かび上がるようなもの。
・各階ごとの配置図
・その場にいることを最も実感させてくれる建築。
・「そこにしかない形式」という言葉の論理矛盾(特定性と普遍性)。その克服。
・いかなる建築も環境総体に対するリノベーションである。


結構いいことは言ってる。


★★★☆☆