「ある朝スウプは」監督・脚本:高橋泉、主演:廣末哲万、並木愛枝


ある朝スウプは [DVD]

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最近ちょっと注目の監督らしいので観てみました。



ラストこそ、かすかに希望を感じさせるものの
(それすらも確かではないのだが*1
映画内の99%暗い。。。
正直、見ていてあんまりいい気分はしない。


しかし、こういう濃密な感じの映画は
他にあんまり経験したことがなく
それだけにショッキングなものであることは間違いない。




パニック障害と診断された主人公の男が
引きこもりになってしまい、
徐々に新興宗教に嵌っていく。
それでも恋人は彼に尽くしながら
必死に支えようとするが、、、


実際こういう人間が
どうなってしまうのか知らないので、
その辺の描写がリアルなのかどうか分からないけど、
男の言葉に全く抑揚がなく、
かなり不気味である。


見るべきところは、
二人の関係がたった一つの問題によって
気持ちや感情と共に崩れていく
その見事なまでに冷静な描写力である。


確かにカルト教団に侵される男の状況は普通ではないのだが、
日々の会話や出来事は日常的で違和感はない。
そんな中、二人の関係は徐々に徐々にずれ始め、
いつしか修復する事は完全に不可能になる。
おそらくそれまで何年もかけて築き上げてきたであろう
二人だけの日常の歴史による強い結びつきが
こうも儚く脆いものなのかと思い知らされる。


圧巻は最後のワンシーンである。
このシーン、もっと言えば最後の一言があるゆえに、
二人の間にあった愛情が
そうした崩壊過程をも含めて全て浄化され、
絶望的な状況の中、
清々しささえ感じられてしまうのである。


ちなみに制作費3万円だったらしい。


映画としてのすばらしさは認めつつも、
二度と見たくない映画である。
★★★☆☆

*1:ここで見えたかすかな希望も、
実は彼女が男から解放されたことによる
ちょっとした安堵感に過ぎないのかもしれない。