「ベルリン・天使の詩」監督：ヴィム・ヴェンダース

ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]

ここ最近娯楽映画ばっかり観てたんで、
久々にこういう芸術性の高い映画に触れて、
正直集中力を保つのが大変だった。

天使、といっても見た目は
普通の中年のおっさんなんだけど、
は人の心の声を聞くことができ、
世界を漂っている。
子供以外の人間には見えないらしく、
また人間に触れることもできない。
一人？の天使は永遠の霊であることより、
生きる実感をもつことができる
人間になることを望んでいるようだ。
彼はベルリンの地に下り立ち、
人間の女性に恋をする。
やがて、かつて天使だった
ピーター・フォーク本人にも導かれ、
彼は天使から生命に限りある人間になり・・・

とにかく映像が美しい。
天使からの目線では白黒の、
人間の目線からはカラーの映像で世界は映し出される。
前半白黒がほとんどなだけに、
後半天使が人間になったときからの
カラー映像が活き活きとして感じられる。

世界の政治状況に意識的になる前の青春期に
ベルリンの壁が崩壊していた自分にとって、
その直前である1987年のベルリンの映像は
とても新鮮で異様な光景に見えた。
上空から一望するベルリンの景色、ポツダム広場は、
なんだかわずか20年前の風景には見えず、
終戦直後と言われても
何の疑問も感じないほど荒廃した印象を与えている。

そんな場所にあって、
人々の心の苦悩が次々と流れてきて、
天使の感情をも刺激しているようで、
世界の強い全体性と永続的なつながりを
感じずにはいられない詩とともに、
壮大な世界観が感じられる映画である。

ちなみに図書館が何度か出てくるんだけど、
どこかで見たことある建物だと思ったら、
ハンス・シャロウンの図書館だった。
大学時代の卒論で扱ったもので、
まだ写真でしかみたことがなく、
動く映像として見ることができ、
感慨深いものがあった。
彼の建物は動くことで
大きく意味が生じる建物なだけにとても参考になった。

★★★★☆