「天国の口、終りの楽園」監督・脚本:アルフォンソ・キュアロン


天国の口、終りの楽園。 [DVD]

天国の口、終りの楽園。 [DVD]


真夏の海に駆け出してそのまま飛び込みたい。
おそらくこの映画を観終わった誰しもが
そんな気持ちにさせられてしまうことだろう。


このメキシコを舞台にした、
二人の少年と一人の女性によるロードムービー
灼熱の太陽の下、どこまでも陽気で
ラテン系独特の雰囲気の中、
その溢れんばかりの若いエネルギーに満ちている。




夏休み、二人の少年は退屈を持て余していた。
そこに、夫に浮気され行き場のなくなった女性が現れ、
成り行きで一緒に旅することになる。
天国の口という実在しない理想のビーチ目指して。


道中、小さな事件が起きたり、
意外な事実が明らかになったりして
三人の関係は荒れる。
しかし、その関係はすぐに修復される。
天国の口にたどり着いたのだ。
それこそ、青春期独特の無邪気さによって、
三人はその楽園が永遠のものであるかのように
開放され、はしゃぎまくる。


しかしこの旅はあらかじめ5日間と定められていた。
それは車を借りられる期間によって
半ば強制的に定められた期間であるが、
それは同時に決して永遠ではない楽園を象徴している。


最終的に、女性はそのままビーチに残り旅を続け、
二人の少年は帰路につく。
映画自体は青春期への賞賛としてではなく、
大人になるための通過儀礼として
一つの青春期の終り(新たな始まり)を描いている。


そして最後に明かされる真実が
何よりこの一瞬の儚い輝きを強調する。


★★★☆☆