「建築が生まれるとき ピーター・メルクリと青木淳」


東京国立近代美術館に行ってきた。
ピーター・メルクリの講演会は先着順だったので、
やはり間に合わなかったけど。
半分覚悟はしてたけどやはり残念。
展覧会場へ。


会場の半分くらいを使って並べられた
青木淳の住宅《M》のスタディ模型の展示。
周辺の壁を使ってピーター・メルクリのスケッチの展示。
特に何のプロジェクトかは特定されてはいないものが多数。
一部模型なども展示されている。




まずは青木淳から。
建物の基本的な形が決まるまでの過程が
スタディ模型と青木淳自身によるコメントで
20段階で示されている。
実際には手順が前後したりしてるんだろうけど、
考え方のコメントがあってすごくわかりやすいし、
見ごたえがある。


大体1段階で平均5、6はあっただろうから
計100個くらいの1/100の模型がつくられている。
おそらくこれ以外にもたくさんあるんだろうけど、
最低でも100個くらいは
1プロジェクトのボリュームを決定するのに
つくっているということである。。
膨大な量の思考とエネルギーが
一個の形に注ぎこまれている。
やはり建築は体力・精神力の勝負なのだろうか。


一つ一つを取り上げても、
どれも一度は考えそうなことだし、
そんなに新しいこともやっているようには見えない。
ただし、この膨大な過程で振り落とされていったものの量が
結局最終的なものの質を決定していることは間違いない。
森山大道も量からしか質は生まれないと言っている。


もちろん一つ一つ、
ちょっといいなと思えたりするところはあって、
もうそれでいいんじゃない?的な感じのものも出てくる。
それでも、ちょっとでも満足いかないところ、矛盾があれば、
それを捨て、次の可能性に進んでいく。
その繰り返し。
ひたすら考え続けることの重要性が見えてくる。


次にピーター・メリクルの主にスケッチ画の展示を見る。
彫刻家ハンス・ヨゼフソンに師事した建築家で
以前ヨーロッパを旅したときに
スイスのジョルニコにあるヨゼフソンのための美術館を
訪れたときに衝撃を受けて以来、
敬愛している建築家の一人である。


スケッチは一見どれも子供が描いたかのような
ラフなタッチのものが多いが、
しかしよく見ると、どれも丹念に描かれた跡が感じられるし、
バランスをとりながらも、意図的に崩されていたり、
一枚一枚不思議な魅力を感じさせるものばかり。
ヘタウマ的な趣とも少し違う。


スケッチは主に立面に費やされている。
幾何学的な単純な線と面で
窓の位置、大きさ、柱のピッチ、各層の高さなど、
プロポーションが一つ一つ丹念に検討されている。
色を使ったものも主に赤と黄色で
純化されている。


これがそのまま建築になったらと想像すると
何かとんでもないものを見ているような気さえしてくる。
純粋に何かを追い求める姿勢と
哲学的な奥深さから感じるものは形容し難い。


建築が生まれるとき。
まさにその一瞬を捉えた展示構成はすばらしかった。


★★★★☆