「69」村上龍


69 sixty nine (集英社文庫)

69 sixty nine (集英社文庫)


久々に村上龍の小説を読んだ。
実はこれ4,5年前に買ったまま何故か読まずにいたもの。
だから映画化前で表紙が今のと違う。


作者自身の体験を下に描かれた17才の頃の青春小説。
読後感は今までに無く良い。爽快。


1969年という全共闘真っ盛りの社会的時代背景のなか
地方の学生である反体制の主人公にとって信じられるのは
映画、音楽、詩、アート、演劇・・・芸術と、
またそれを信じる友だけだった。
教師や刑事といった大人たちや、
従順に従う生徒たちは退屈の象徴でしかなかった。
権力の手先のような彼らに抗う手段は、
結局のところ彼らより楽しく生きることなのだと考える。




きっかけは好きになった女の子を振り向かせようという
不純な動機ながらも、
彼に備わったその圧倒的な創造性と構想力をもって
周辺を巻き込みながら
バリケード封鎖、フェスティバルを敢行する。


多くの人を巻き込むためには
それなりのパワーとエネルギー、
そしてカリスマ性が求められる。
それらを兼ね備えたその人間的魅力が、
つまり作者自身の魅力が
これ見よがしに見せ付けられる。
それでも嫌味一つ感じられないのは、
まさに村上龍という男の人間的魅力に他ならない。


★★★★☆