「羅生門」黒澤明監督、三船敏郎主演


羅生門 デラックス版 [DVD]

羅生門 デラックス版 [DVD]


NHKのBSで黒澤明没後10年特集ということで
全作品放送される。その第一弾。


かなり前に観てうる覚えでしかなかったけど、
今回あらためてその魅力を再認識した。
黒澤明監督の作品の中ではかなり好きな方。
特にこの作品と「七人の侍」の
三船敏郎の野性的な魅力は
最近の役者のなかにはなかなか見つけることができない。




まず冒頭から羅生門のセットの迫力に圧倒される。
足元の三人を見下ろさんばかりの巨大な羅生門
土砂降りの雨。


森の中で殺人事件が起きたのだが、
4人の証言が全く食い違っている。
当事者の証言はどれも自分がやったことになっているので、
自己保身のための嘘では無さそうである。
三人はその不思議な事件について話し始め、
回想シーンへ。


一転してまぶしい太陽の下、
森の中を人が歩くシーンが長まわしで映し出される。
そのシーンだけでまた魅せられる。
まぶしい太陽の光が
木々の隙間からもれている。
風の動きをこの影で表現したり、
登場人物の表情と重なったりする。
白黒だからこその表現なのかもしれない。


同じ事件について
それぞれ異なった回想シーンが流される。
どれも人間の欲や憎悪といった醜い部分が
狂気をもって描かれていている。
本質的な人間存在を見事な形で表している。


最近の日本映画の繊細で
ディテールにこだわったつくり方もいいんだけど、
この映画を観たら、
この時代が持っていた力強い描写力もいいと思った。
戦後日本の貧しい時代
ぎりぎりの生活状況の中
切迫感はある意味
今の日本の状況に似て通底している気もするけど
実はその度合いは結構違っていて
もっとシビアなものだったのかもしれない。
そしてこの映画のぎりぎりの心理状況を描くとしたら
このくらいくっきりと鋭く描かないと
表現し切れなかったんだろうなとも思う。


それにしても、この頃の女性の
眉毛がすごいことになってる。


★★★★☆