森山邸/マリオ・ガルシア・トレス


森山邸で行っているマリオ・ガルシア・トレスの個展を見に行った。
目的は森山邸にあったんだけど、
コンセプチュアル・アートというその展示にもちょっと興味があった。




まず会場に近づいて見えてきたのが真っ白な箱。
住宅街に一際目立つ形で圧倒的な存在感を放っている。
正直期待以上の美しさ、白さだった。
竣工後、結構時間が経っているのにきれいに保たれてる。
施主がしっかりメンテナンスしていることが伺える。
同時にカーテンが開け放たれたガラス面を通して
内部の様子がくっきり見える。
個人の生活感が文字通り露になっている。
センスのよい家具や小物が置かれ、
まさに住む人の力量が問われる家である。
個人の存在が際立つ住居。
見ていて楽しくなる。
周辺にも少なからず影響を与えているはず。
篠原一男がかつて言った「住宅は芸術である」を
まさに実現している。
もはやアートとしての住居空間が21世紀に誕生したようである。


ガラスが二面に張られたバスルームの箱は
バスルームとしての機能としては必要ないガラスが
外側の空間の視線の抜けのために張られてりる。
相当空間が練られていることが推し量れらる。
全体のスケール感も申し分ない。


それにしても、
ここまでの建築をつくるには施主の協力、
理解があってこそだと、
まさに施主と建築家の共同作業であるということが認識される。


さて、コンセプチュアル・アートの方はというと、
案内人に地下へと導かれ、、
普段森山さんがオーディオスペースとして使っているという空間に
一つ目があった。


どうやらスライド作品らしいのであるが、
しばらく経っても何も映されない。
ただ何も映っていない四角い光だけ。


しばらく経って、
実はスライドはこの何も映っていない一枚だけと告げられた。
作者が1ヶ月ポケットに入れてキヅつけられたこの一枚だけだと。


・・・なるほど。そういうことかと。
しかしこの非日常的な住宅にあって
このスライドは結構馴染んでいた。


つぎに外へ出て別の箱に。
入口っぽいところはなく。
大きく開け放たれた少し高い位置にある
横に広い開口部から中へと入る。
にじり口のようなものである。


外部に通じているのは
入ってきたこの大きな開口部と、
反対側の上にあるこれも大きな開口部だけ。
入口がないことと少し高い位置にあるこの空間は、
妙な安心感と落ち着きがある。
開口部と壁の比率が丁度よく心地よい空間。


さて中には
作者が過ごしたホテルの一室にあったであろうメモ用紙に
文章が書いてあるものやコップやタバコの痕がついたものなどが
額縁に入れて飾ってあった。
近くのテーブルにそのホテルの住所が
差出人と宛名の両方に書かれた封筒が。


正直意図はよくわからなかった。


アートは以上2作品だけだった。
特にアートとしてつくられたものは無く、
作者の生活の一片が切り取られてアートとなっている。
まさにコンセプチュアル・アート


あまり期待していくと肩透かしを食らうかもしれないが、
これはこれでオツなものである。


森山邸
★★★★★