「ばかのハコ船」山下敦弘監督、山本浩司・小寺智子主演

コメディ映画といってしまうとちょっと違う。
小ネタを交えただけの安易な笑いでなく、
もっと深い笑いを映画全体を通して追求している。
笑える人は笑えると思う。
個人的には笑えた。

リアリズムの宿でもいい味出してた山本浩司が
ここでもかなりのはまり役を演じている。

音楽・映像がところどころB級っぽいんだけど、
全体を見ればとても骨太な作品。

わがままで、切れやすく、
考えが浅い上に計画性がない、
なのにプライドだけは高い。
連れの女性に対しても無茶苦茶な感じ。
客観的に見ればどうしようもないダメ男。
だけど何故か憎めないやつ。
その男についてく女。

そんな男女が
東京で借金を抱えて新しい商売を始めたんだけど、
うまく行かなくて、
田舎に帰ってやり直そうとする・・・

ストーリー自体は至ってシンプル。
些細な（本人にとっては大きな）出来事を
コミカルに、そしてリアリティをもって描く。
下手をすると
ほんとにその辺の人を撮って映画にしただけ、
みたいになりそうなシーンも実に上手く
演出されている。

山下監督の初期の作品。
まだまだメジャーな感じはないんだけど、
ほんとに人間が好きなんだなぁと思わせる、
らしさが滲み出た傑作だと思う。

★★★★☆