「庭の桜、隣の犬」角田光代
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/09/14
- メディア: 文庫
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小説には永代読み継がれていくものと
その時代時代に必要とされ消えていくものがあるとすれば、
これはまさしく後者である。
まさに今読むべくして生まれてきたものと言ってよいだろう。
モノはあっても物語がない。
作者はそんな時代を鋭く感じ取とりながら
それでも尚、
前を見つづけることの意味を見出そうとしている。
時代感覚にすぐれた作家が、
その空気をまったく濁すことなく、
一つの物語にしてみせた。
東京郊外で何不自由なく生活する夫婦。
しかし二人が共有する生活は薄くて脆い。
次第にその関係の危うさが露になって、
いつの間にかどん底まで堕ちてしまう。
それでも、彼らの会話は妙に楽天的で
とても軽やかである。
それが逆に乾いた空気を強調して
不穏な雰囲気を醸し出す。
乾ききった二人の生活は、
今の時代どんな夢物語を描くことができるのか
そんなことを考えさせられる。
だからこそ、今読まなければ意味がないし、
そして、明日には読み捨てなければならないものなのだ。
★★★★☆