「グレート・ギャツビー」


グレート・ギャツビー (新潮文庫)

グレート・ギャツビー (新潮文庫)


1920年代のアメリカ東部上流社会の中、
時にクールに、時に情熱的に生きる若者たちの姿を、
叙情的な文体とドライな心理描写で描いたフィツジェラルドの代表作。




ただ一人の女性に対する愛情にすべてを掲げて生きた、
西部出身の成り上がり者ジェイ・ギャツビーの生涯を、
東部社会に憧れて、やはり西部から出てきたが、
完全にはそこに入り込めない若者ニック・キャラウェイの視点から描いている。


その両者とも作者の分身でありながら、
まったく対極的な人物像を成している。
その複眼的な描写によって、
当時、禁酒法時代の不穏が渦巻く日々のなかの、
アメリカ上流社会にある華やかな一面と、
その背後にある退屈な虚無感という一面とを鮮やかに表出さている。


ギャツビーやトム・ブキャナンらを通じて、
徐々にニックの中に東部社会の怪しさのようなものが見え始め、
再び彼の内奥にある中西部的な純朴な性質がよみがえってくる。


さながらニックによるクールな観察記のようであるが、
最後のトム・ブキャナンとの握手に象徴されるように、
彼自身の成長記でもある。


★★★☆☆