「日曜日たち」吉田修一
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/03/15
- メディア: 文庫
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連作短編集。「パーク・ライフ」以来、結構好きな作家さんです。
東京で一人暮らしをし、
都会ならではの漠然とした不安や孤独を抱える若者達の5つの物語。
各話を繋ぐ謎めいた幼い兄弟の行方とともに、
それぞれの過去と現在の日曜日が交錯しながら話は進んでいく。
疲労感や焦燥感ばかり先行して、
これといった確かな生き方を示せずに流される、
決して満足することのない日常。(現在)
その者たちの周りに現れ、
消えていく2人の幼い兄弟との触れ合いによって、
そうした日常に灯される小さな光。(過去)
そして、その日曜日、何かが決定的に変わっていた。
最終話の主人公は兄弟と再び再会し、そのことに気付く。
そしてまた、どこかしら希望の光が望めるのなら、と歩みだす。
若者の共通項を紡ぎ出しながら、生きることの意味を静かに見つめ直す、
いや、意味なんてないこと、生きることそれ自体が意味なんだと示した作品。
前に読んだ「パレード」も、
同じ部屋で生活する若者5人の
それぞれ視点から描いた連作だったけど、
どちらも最終章までの飽きさせないストーリ展開といい、
綿密な構成の仕方といい見事。
何気ないんだけど、完成度は高い。
★★★☆☆