「日曜日たち」吉田修一


日曜日たち (講談社文庫)

日曜日たち (講談社文庫)


連作短編集。「パーク・ライフ」以来、結構好きな作家さんです。


東京で一人暮らしをし、
都会ならではの漠然とした不安や孤独を抱える若者達の5つの物語。
各話を繋ぐ謎めいた幼い兄弟の行方とともに、
それぞれの過去と現在の日曜日が交錯しながら話は進んでいく。




疲労感や焦燥感ばかり先行して、
これといった確かな生き方を示せずに流される、
決して満足することのない日常。(現在)


その者たちの周りに現れ、
消えていく2人の幼い兄弟との触れ合いによって、
そうした日常に灯される小さな光。(過去)


そして、その日曜日、何かが決定的に変わっていた。


最終話の主人公は兄弟と再び再会し、そのことに気付く。
そしてまた、どこかしら希望の光が望めるのなら、と歩みだす。


若者の共通項を紡ぎ出しながら、生きることの意味を静かに見つめ直す、
いや、意味なんてないこと、生きることそれ自体が意味なんだと示した作品。


前に読んだ「パレード」も、
同じ部屋で生活する若者5人の
それぞれ視点から描いた連作だったけど、
どちらも最終章までの飽きさせないストーリ展開といい、
綿密な構成の仕方といい見事。


何気ないんだけど、完成度は高い。


★★★☆☆