「リリイ・シュシュのすべて」監督:岩井俊二


リリイ・シュシュのすべて 通常版 [DVD]

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苦手な部類に属する監督なんだけど、
一応見ておかないとダメだろうなと手に取った。
イントロから、予想通り
よっぽどナルシストなんだろうなという
あまりに臭い演出と
暗そうなストーリー展開、
チカチカする画面で
観るのをやめようかと思ったけど、
30分くらい我慢して観てると、
演出のそれ以上に、
だんだん展開が激しくなっていく。




中学生という多感な時期の
青臭くて痛々しい姿を結構的確に捉えてる感じで、
演じる役者もそれを自然に体現しててそれぞれ良かった。
純粋過ぎるがゆえに
時にやり場のない怒りは狂気と化すような
捉えどころがない彼らの深層を
全体として結構激しく深い部分まで表現している。


舞台となる
いわゆる地方都市の郊外的な殺伐とした風景を映し出した映像は
残酷なほど美しかった。
途中手持ちカメラの妙にドキュメント調なタッチに切り替わったり、
挿入されるインターネットに打ち出される文字を使ったり、
変に気取った演出などせず、
もっと素直に淡々と撮った方が
ストレートに内容が伝わる気はしたけど。


またこの映画に欠かせない
小林武史の音楽があまりに嵌り過ぎていて、
逆にちょっとやらしい感じもしたけど、
ボーカルも含めて
音楽がうまくこの世界観を表現していることは確かだ。


生理的に多分に受け付けない人が居るような気はするけど、
小さな物語に集約される閉塞的な現代社会の問題を
分かりやすく理解するには是非とも観ておきたい映画。
ただし、内容に救いがないので後味はイマイチ。


★★★★☆