「ARTIST FILE 2008, The NACT Annual Show of Contemporary Art」国立新美術館



美術館が定期的に現代作家を紹介していくプロジェクト。
8人のグループ展。
テーマは特になく、表現メディアも異なる。


目的は、さわひらき
日本では彼の個展はなかなか見られないので、
行かなくてはと思いつつなかなか行けず
ようやく見ることが出来た。


期待を裏切らない展示内容だった。
ビデオインスタレーション
暗闇の中、6枚の大きな板にそれぞれ異なる映像が映し出されている。
ノスタルジックな映像が自身の記憶と共鳴する。
決してあるはずのない風景なのに
以前に見たときと同じ感覚に瞬間的に陥る。
なんだろう、この不思議な感覚。
時間を慈しむと言ったらいいのだろうか、
一つ一つ刻まれる時間がとても大切なものに思えてくる。
現実と非現実が際どく重なりながら、
もう一つ全く別の世界をつくり出している。
記憶の中にあった色んな感情が一気に呼び覚まされる。
涙が出てきそうだ。




個人的にアートを見に行くという感覚はなかった。
さわひらきという一人の人間の幻影を見に行くという感じ。
うまく言えないけど、
例えば
映画ってアートじゃないし、
その逆も然りのはずなんだけど、
その関係に割って入るような、
現実とアートの中間のような、
アートと記憶の中間のような、
記憶と現実の中間のような、
なんかそういうところを彷徨っているような感じ。


それぞれタイトルがついている。


"the birds and the sea"
暗い海の上を多くの鳥(カモメ)が飛び続ける映像が
スローモーションで流れる。
波のしぶきとはためく翼のスローモーションが
今まで見たことのない不思議な景色となって映像化されている。
どこか物悲しい感じ。


"moss"
深い緑が印象的。


"talking to the wall"
古い家屋の窓と海辺が直接繋がっていたり、
家屋に海が入り込んできたり、
ランプがただ揺れ続けていたり。


"for a moment"
これは以前に見たものに近かった。
夜の海辺に観覧車の影や花火、巨大な月が重なり、
童話的な世界が繰り広げられる。


"kaerimichi"
風景がグラデーション的に連続して切り替わっていく。


"fragments"
古時計。


一つ一つの映像はそれぞれ独立した作品であるが、
全体が並べられることでより一層作品の強度が増している。


その他、印象に残ったアーティスト。


エリナ・プロテルス
一枚の写真から伝わる強いイメージ。
深遠なメッセージに対してタイトルにユーモアがある。


佐伯洋江
精密なシャーペンのタッチ、余白の使い方が上手い。


祐成政徳
巨大な奇妙なモニュメント。とても男性的な、とだけ記しておく。


★★★★★