「ファンタジスタ」星野智之


ファンタジスタ (集英社文庫)

ファンタジスタ (集英社文庫)


砂の惑星」「ファンタジスタ」「ハイウェイ・スター」
の三作品が収録されている。


今までに読んだことのないタイプの小説。
どこかラテン系の異国的な妖しい雰囲気が漂っている。
短編だがいずれも濃厚なメッセージが含まれた骨太な力作である。


最初はこのちょっと暑苦しい空気に抵抗感があったけど、、
一度入り込むとなかなか抜け出せない
魅惑的な小説世界を作り出している。




砂の惑星
小学生の集団自殺事件を取材するライターの視線から、
ホームレス社会、日系移民問題を描く。


ファンタジスタ
首相公選制となった日本。
元サッカーのスター選手がカリスマ候補者として持て囃される中、
その権力をもってアジアをも取り囲んでしまおうとする野望が見え隠れする。
フットサルで汗を流す主人公が
違和感を感じながら過ごす投票日までの時間を
プライベートな別れと織り交ぜながら描く。


Aリーグ、Rリーグ、Wリーグ、Nリーグ、
ユニフォーム、リフティング占い、ダキマクラ、


複雑に重ね合わされた大小の物語が
不協和音となって読者の気持ちを激しく揺さぶる。
作者の視野の広さ、懐の深さが窺える作品である。


「ハイウェイ・スター」


ハイウェイを疾走する若者。
ギラギラと輝く世界から
今度は穴を掘る仕事に誘われ、
ロボトミー、新天地、鬼の肉
妖しい世界に引き込まれようとするが・・・


もちろんBGMにはcymbals の「Highway Star, Speed Star」がいい。
ただし前半だけだけど。


3作品には政治や身体という関連性が見られる。
いずれは芥川賞もとるだろう作家の一人だ。


★★★★☆