「ロックンロール」大崎善生


ロックンロール (角川文庫)

ロックンロール (角川文庫)


いつもとは、ちょっと違う異色な感じ。
小気味よい感じはあるものの内容がちょっと薄い。
全体がちぐはぐな感じで繋がり感が薄いためか現実感に乏しい。




小説が書けずにパリに滞在する中年作家を
編集者はともかく、その彼女、
その彼女の彼氏が訪ねてくる。
設定もさることながら、
彼らの関係、コミュニケーションそれ自体にも
何か違和感を感じながら読み進めた。


生活感を感じさせない透明な文章自体が魅力の作家。
だけに、ストーリーには少なくともリアリティが欲しかった。


まあ、あくまでフィクションであることを割り切ってしまえば
面白く読めるとは思うんだけど、
この作家の方向性が
読者にある種の強い共感を求めているような気がするだけに
矛盾があるような気がした。


ただ、小説内で主人公たる作家が
小説の感動が文章そのものだと答えているように
文体が相変わらずすばらしいので、
すらすらと読めてしまう。


文体だけで内容が・・・
★☆☆☆☆