「蛇いちご」監督：西川美和

蛇イチゴ [VHS]

「ゆれる」が良かったので、監督の第1作も見てみた。
そして、確信した。
この監督、本物だと。

２作とも鋭い心理描写といい
ディテールへのこだわり方といい
ものすごい完成度の高さとスケールの大きさを合わせもっている。
相変わらず脚本に全く無駄がない。
その場の雰囲気を一変させてしまう一言や
一秒一秒重なるごとに意味が増していくような沈黙だったり、
この人にしかない独特の＜間＞みたいなものがある。

それと音楽の使い方やカメラワークといった
演出もとても上手い。
技術的なというよりは、これはもうセンスなんだと思う。

扱うテーマは「ゆれる」に似てシリアスだったけど、
テイスト的にはこちらの方が喜劇的な要素が強い。
追い込まれていくうちに、否応なしに現れてくる人間の本性を
コミカルに描いているので、
内容的には暗い話なんだけどそれほど重たく感じさせない。
ただそれがむしろ不気味な感じを出していて、
感情がその両方を行き来してしまって
常に揺さぶられた不安定な状態にさせられるのである。

なんというか、
これだけ誇張されて描かれかた人間像が
２時間に凝縮されて現れてくるというのに、
何故だかとてもリアルに感じられてしまうのである。

雨上がり決死隊の宮迫博之が助演で出てる。
お笑い芸人としての彼はあんまり好きじゃないけど、
役者としては結構、いや、かなりいけると思った。
つみきみほの肝が据わった感じの役どころの演技もいい。

とてもデビュー作に思えない
★★★★★