「乳と卵」川上未映子


乳と卵

乳と卵


第138回芥川賞受賞作。


男からは見えない女性の内部を抉るような作品。
まるで日記をのぞいてしまったような
後ろめたさを覚えるほどだ。
そういう意味では興味深く、新鮮な感じ。




前半で3人の登場人物達のあまりに脆い性格付けと関係性を
特徴的な「。」のない長々とした関西弁による文体で示し、
ラストで一瞬のうちに
印象的なクライマックスへと昇華させる手腕は見事である。


ただ、物語自体の内容は
頭の中で思いついていくものを
なんとなくつらつらと記していったら、
小説が出来てしまった、
といった感じだ。
意識して作りこまれている感じがしない。
ラストの数ページだけは、
それらを収束するべく作家としての意識が
働いているような気はするが。
この作品が純文学における
新たなエポックを画する一つとなりえるかはまだ分からない。


とはいえ、とても現代的な感覚に支えられ、
また女性的な繊細さと強さに溢れた、
感度の高い作品に仕上がっている。


★★★☆☆