「カンバセイション・ピース」


カンバセイション・ピース (新潮文庫)

カンバセイション・ピース (新潮文庫)


ようやく読み終わった。時間掛かった。
確かに分量はちょっと多いんだけど、
けっして内容が込み入ってるわけでもない。
いやむしろあっさりしている。
ただ、いちいち立ち止まって考えさせるような問答、
「カンバセイション」が繰り返し交わされるのである。
さらにその進行をより自然に忠実に示すためか、
例えば二人が話をしている中に
全く関係のないもう二人の会話があったりして、
つまり会話が連続してなかったりして、
普通に読んでいくと、
「あれっ?」って何度も読み直してしまうのである。




そしてこの本の最大の特徴と言うべきか、
基本的にプロットがない。
つまり小説を読むための最大の動機であるはずのストーリーがないのである。


そんな読みづらく、不親切な語りの上、
これといった大きな出来事や事件もない小説。
なのに何故か最後まで読み進めてしまう、
小説として読む事が出来てしまう不思議な本。


では一体何が書かれているのかといえば、
世田谷にある古い一軒家に住む私、妻、妻の姪、三匹のネコと
部屋を間借りする友人が経営する会社の三人が過ごす日常を
私が考える思考の軌跡を交えながらただただ綴ったものである。
感覚的に、時に哲学的に。


ここで書き記す事が出来るのはそのくらいである。
あとは読むことにしか意味がないような気がする。
気持ちのよい読後感を味わうためにも。
それは作者の考えに沿っていえば、
音楽を聴くように小説を読むことに通じていくんだと思う。


★★★☆☆