「ロスト・イン・トランスレーション」

監督: ソフィア・コッポラ
出演: ビル・マーレイスカーレット・ヨハンソン


ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

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CM撮影のために東京に来ながらも
アメリカにいる妻とのマンネリ化したやり取りに疲れている映画俳優の男性と
まだ結婚して間もないながらも
夫と気持ちがすれ違い、等閑にされている女性の二人が、
宿泊するホテルで出会い、お互いの孤独感を感じ合い理解し合っていく。
恋愛でも友情でもない繊細で微妙な感情の揺れ動きを、
西洋人から見た東京というエキゾチックな雰囲気に乗せて
ソフィア・コッポラが見事に映像化している。




ややピークの過ぎた感がある「ムービースター」を
ユーモアと滑稽さを交えながら時にシリアスに演じるビル・マーレイ
憂いのある表情が魅力的な(今もっともセクシーな女優と言われてるらしい)
スカーレット・ヨハンソンという二人の演技によって
この映画の完成度が高められている。


トウキョウという得体の知れない街に来たことで、
生活における孤独感がその振幅を増し、
二人はホテルを抜け出し
夜通し怪しげなクラブやバーで過ごすことで、
こうした感情をトウキョウという街に紛らせ、飲み込ませようとする。


世界の行き着く果てが東京のような混沌とした場所だとしても、
きっとネオンや静寂に刺激された感情が
平穏な平衡状態に近づく事はないだろけど、
世界中の人々を受け入れることができる場所なんじゃないかと思った。


こうした外国人の視線による東京の風景は、
自分が小さい頃に感じていた
まったく未知の世界であった東京と重なっている気がする。
溢れかえるネオンがそのまま人々のエネルギーであるかのように
煌々と照らされる街並みがあるかと思えば、
自然の静寂に包まれる神社やお寺、公園がある。
無限に広がるかのような可能性に満ちた「トウキョウ」。


外国人の目を通す事で、なにか記憶の片隅にあった東京への憧憬を
呼び覚ましてくれたようなそんな気がした。


★★★★★